☆彡監修:神田麻帆☆彡
☆彡執筆・イラスト・コメント返信:水澤聖子☆彡
酵素ジュース、酵素浴、酵素栄養学、etc いろんな分野でよく耳にする「酵素」という言葉。何となく体に良さそうな響きですよね。
しかし、酵素とはいったいどういうものなのでしょう?体の中での消化「酵素」と、酵素ジュースの「酵素」はなんだか違うもののような気がする…そんな違和感を私はずっと抱いていました。
ホリスティック栄養学には、酵素の項目があります。私も自然と、酵素について改めて勉強する機会が得られました。
酵素は私たち人間の体に必要不可欠な成分です。
いったいどのような成分で、どのような効果があるのでしょうか?
今回の記事では酵素について、以下の2点を中心にご紹介します。
・酵素って何?
・酵素の種類と働きについて
ぜひ最後まで読んで、酵素についての知識を深めてくださいね。
1、酵素とは
酵素とは、たんぱく質の1種。
「消化・吸収」「代謝」「腸内環境改善」といった様々な生体活動をスムーズに行うために働くものです。いわば「触媒」としての効果を担っていて、化学反応のスピードを上げると考えると良いかもしれませんね。
酵素という言葉で括られていますが、私たちの生体内には約5000種類もの酵素があると言われています。それぞれ必要な場面で、適した酵素が働くことによって、生体活動がスムーズに行われています。
そのため代謝に着目する美容やダイエットといった場面では、酵素を摂り代謝を上げようなどと言われるのです。
酵素には様々な種類があります。次の項で詳しくご紹介しますね。
酵素の種類
酵素には大きく分けて2つの種類があります。生体内で作られる酵素と、食品に含まれる酵素です。
生体内で作られる酵素はその消化の“やり方“によって、さらに細かく分類されます。水素を利用して物質を分解する加水分解酵素、反対にエネルギーを利用して2つの物質を結合させる合成酵素など。他にも転移酵素、酸化還元酵素など様々な役割をする酵素があります。
この中で最も有名なのがおそらく加水分解酵素で、アミラーゼ(糖質分解)やプロテアーゼ(たんぱく質分解)、リパーゼ(脂質分解)といった働きをする酵素ではないでしょうか。
分解酵素は主に消化の過程で働く酵素のため消化酵素と、その後の代謝過程で働く酵素は代謝酵素と呼ばれているようです。
食品に含まれる酵素にも様々なものがあります。
例えばお肉を柔らかくするために柑橘果汁に漬け込んだり、ヨーグルトに漬け込んだりします。また酢豚にパイナップルを入れるというのもお肉を柔らかくしてくれる効果を狙ってのことであり、これらは全て果物に含まれる酵素の力を利用しています。
また、天ぷらに大根おろしを添えたり、脂質の多いサンマや鯖など青身の焼き魚には大根おろしを添えますよね。これは体内での脂質消化を、大根おろしに含まれる酵素が助けてくれるように。
美味しいからだけで考えられた組み合わせなどではなく、きちんとした化学的な理由があったのです。昔の人はそれに気づいて料理を確立させていったと思うと、とても感心させられます。
2、酵素の働き
酵素は、それぞれに決まった役割があります。体内ではたくさんの種類の酵素が、それぞれ自分の働きをこなすことによって、食べたものを消化してくれています。
消化酵素
酵素はそれぞれ役割が決まっており、出来ることとできないことがあります。
例えば唾液に含まれているアミラーゼは糖質を消化してできるでんぷんをさらに分解する酵素ですが、脂質やたんぱく質は分解できません。同じように脂質やたんぱく質を主に分解する酵素は、でんぷんを分解することはできません。
口に入った米粒は小腸にたどり着くまでにアミラーゼやマルターぜという消化酵素によって小さく小さく分解され、やっと吸収することができます。このように、各栄養素を吸収しやすいサイズまで小さく分解していく働きを助けるのが消化酵素です。
代謝酵素
消化酵素によって小さくなった栄養素が小腸から吸収された後のことに働く酵素です。各臓器でエネルギーとなったり、代謝に関わったり、蓄えられたりと、栄養素は様々な働きをします。
食品に含まれる酵素
上の項目でも書きましたが、食品に含まれる酵素もいわば同じようなこと。お肉を柑橘果汁に漬けると、たんぱく質がじわじわ分解され、柔らかくなります。
代表的な食品とその役割をまとめてみました。
酵素の特徴
多くの酵素はしっかりと働ける環境というのがあります。酵素は特に熱に弱く、加熱や摩擦熱によっても失活(働けない状態)します。その失活温度は60度前後と言われているため、熱が加わらない状態で圧搾されたコールドプレスジュースなどが体に良いとされているのです。
体内では60度まで上がることはないですね。しかし温度だけでなく、酵素はpH(酸性度)によっても、働ける・働けないがあるとわかっています。
多くの酵素は人間の体内pH6~8の中性で効果が最大となりますが、胃液に含まれるペプシン(たんぱく質分解酵素)はpH2程度の酸性環境でよく働きます。
人間の体には恒常性という機能が備わっており、体温・pH・水分量などを一定に保っています。そのため、恒常性機能が破綻する疾患等がない限り、酵素は適正に働いてくれるということなのです。
プロモーションとしての酵素
さて、体内での酵素について知ったところで、冒頭の酵素ジュースなどの話に戻ります。
生の野菜や果物には酵素が多く含まれているので、それを生かした形で作られたドリンクやサプリで酵素を外から取り入れようという健康法や宣伝が目につきます。
上述した通り胃にはたんぱく質分解酵素が含まれますので、酵素ジュースなどで摂取した酵素は、胃で分解されてしまうと考えられます。外から取り入れた酵素がそのまま体内で働いてくれるということはないでしょう。
生の野菜や果物には食物繊維が多く含まれているので、これによって腸内環境が整うことはあると思いますが、それは酵素の直接の働きではないと私は考えます。
⭕️食品によって体の中で作られる酵素の働きが高まる
❌食品から取り入れた酵素が直接働く
終わりに
いかがでしたでしょうか。
なんとなく知っているようで、きちんと理解できている方は少ないであろう酵素について今回は深掘りをしてみました。
健康食品やサプリを取り入れること自体が悪いわけではありません。様々な考え方がありますし、良い面もたくさんあると考えています。
宣伝のしかたに囚われず、効果と仕組みを正しく理解して選択していけるようになると、健康への近道になると思いますよ!