☆彡監修:神田麻帆☆彡
☆彡執筆・イラスト・コメント返信:水澤聖子☆彡
カロリーや脂質だけじゃない!血糖値との関係
思う存分満足がいくまで食べたいけど、太るかな。同じものを食べているのになぜか私だけ太りやすい。昔と比べて、減量がしにくくなった。そんなふうに思ったことがある方は、多いのではないでしょうか。
増す食欲と、食べると“太る“という葛藤は(特に女性にとっては!)多くの方が抱えている、永遠の課題ですよね。
太りたくないがため、カロリー表示を気にしたり油っぽいものを避けたり、様々努力されていることと思います。もちろんそれもとっても大事なこと。
しかし、太る仕組みがカロリーや脂質だけじゃなく、食べ方や血糖値とも少なからず関係していることをご存知でしょうか?
同じものを食べたとしても、食べ方ひとつで体への影響が変わるとしたら。もちろん“太らない“食べ方を習得したいですよね!
そこで今回は、「“太る“の仕組み」をテーマに、糖と脂質の代謝のされかたを紐解きながらご説明していきたいと思います。
糖の代謝
口から入った炭水化物は、噛み砕かれさらに胃でこなされ、十二指腸(胃と小腸の繋ぎ道)を通り、小腸へ送られます。その各段階で消化酵素によって少しずつ吸収されやすい形へと分解され、最終的にグルコースという形まで分解されていきます。
小腸に到着した糖(グルコース)は小腸の壁にある糖専用のドアを通り、血液中に移動します。
血液中に糖が増えたことが感知されると、膵臓から「インスリン」という血糖値を下げるホルモンが分泌されます。そうすると、血液中にあった糖はインスリンに連れられて各臓器や筋肉の中へと入り、エネルギー源として使われます。
血液中の糖は減りますから、血糖値は下がった状態となります。
血液中の糖の量が多い状態を血糖値が高い、少ない状態を血糖値が低いと言いますが、持続的に血糖値が高いになってしまうのがいわゆる糖尿病ですね。
各臓器や筋肉へと糖が十分に行き渡り、それでも糖が余っている場合は肝臓に蓄積され、各所でエネルギーが足りなくなったときに肝臓から出されて、エネルギーとして使われます。
脂質の代謝
食べものに含まれる脂肪は、多くが中性脂肪と言われる形で存在しています。胃でこなされ腸に送られる時に、十二指腸で胆汁・膵リパーゼによって分解されます。
分解され小腸に行き着いた脂肪は吸収され、タンパク質と結合し、血液に乗って肝臓や脂肪細胞へと運ばれます。
脂肪は「悪者」というイメージが強く持たれていますが、実は体にとってなくてはならない成分。皮下脂肪のおかげで内臓が守られ、体温を保つことができ、糖が不足した時のエネルギー源にもなります。また。脂溶性ビタミンの吸収を促す働きもあります。
しかし臓器でエネルギー源として使われるのは、①糖②脂肪の順。(筋肉では、運動時:①糖②脂肪の順、それ以外の通常時:①脂肪②糖の順)
そのため必要以上の脂肪を取ると、蓄積分がどんどんと増えていくことになり、結果「太った」と悩むことになるのです。
太る仕組みは、インスリンにあった!
血糖値が上がるとインスリンが分泌されますが、「噛む」という行為もインスリン分泌を促すスイッチとなっています。さらに、食物繊維はインスリンの働きを活発にすることがわかっています。
このことから、食事の最初に野菜をゆっくり噛んで食べると(研究では30分が理想的とされています)インスリン分泌が促され、急激な血糖上昇を防げることがわかっています。
インスリンは肥満ホルモンとも呼ばれています。なぜなら、血糖値を下げる働きの裏で、脂肪の分解を妨げる働きも持っているから。
早食いや甘いジュースなどの摂取で急激に血糖値が上がってしまうと、血糖値を下げようとして大量のインスリンが分泌されます。大量のインスリンによって脂肪が分解されにくくなり、結果蓄積されていく。これが「早食い=太る」の仕組みです。
早食いになりやすい麺類(しかもほとんどが炭水化物!)や丼物は、どちらかというと「太りやすい食べ物」と言えます。
そうならないために、上で書いたように、食事の最初には野菜を食べ(「ベジファースト」ですね!)ゆっくりよく噛みましょう。
体に対して「さあ今から血糖値が上がるものが入ってくるぞ。インスリンを出す準備をしましょうか。」と認識させることで、大量にインスリンが分泌されるのを防ぎ、太りにくい仕組みを作ることができます。
野菜ジュースはOKか?
病院での勤務時代、栄養指導で「野菜を食べる代わりに野菜ジュースを飲んでもいいですか?」と何度聞かれたかわかりません。
上で書いた仕組みがわかれば、野菜ジュースでは効果が十分でないことがわかってくるのではないでしょうか。
最近は野菜ジュースの中にも食物繊維強化の商品が売られており、全く意味がないわけではありません。しかし2つ、野菜ジュースでは効果が十分ではない理由があります。
①「噛む」行為がもたらす、インスリン分泌準備の効果が得られないこと
②野菜に含まれる糖質が液体で小腸に流入することで、血糖値が上がりやすくなること
この2点を考えれば、やはり野菜を食べる代わりに野菜ジュースを飲むということは十分な代用にはならないと、私は考えます。
毎日毎食野菜を準備し、時間をかけて食べることはとてもとても大変。なので、「野菜ジュースはどうしても疲れた日のお助けアイテム!」という具合に、たまに利用する程度をオススメしています。
噛むことで、満腹中枢へ指令が伝わる
最後に当たり前のことですが、血糖値の変動云々、難しいことは抜きにしたとしても、これも忘れてはならないことですね。
しっかりと噛むことで脳の満腹中枢へ「もうお腹いっぱいだよ」と言う指令が伝わります。先に麺類や丼物が早食いになりやすいと書きましたが、あまり噛まずに食べられるこういった料理は、満腹中枢が刺激されにくく、食べ過ぎてしまう傾向にあります。
するするっと丼1杯のラーメンを食べ終えて、餃子も、なんなら半チャーハンも食べれちゃった!けどお店を出る段になってみると、お腹がはち切れそうで動くのがしんどい…なんてご経験はありませんか。
食べているその時は、噛まないから満腹中枢が刺激されずにいくらでも食べられてしまう。けども少し時間が経ってみると、食べ過ぎていたことに気づくのです。
こう書きながら、実は私もラーメンや丼は大好きです!笑
食べちゃダメなわけではありません。そればっかりにならないように注意しましょうねと言うことです。
太るの仕組み、まとめ
・血糖値が上がると、インスリンが分泌される
・インスリンは脂肪の分解を妨げてしまう
・血糖値が急激に上がるような、糖の多いもの・液体で甘いもの・早食いは、インスリンを大量に分泌させてしまう
・食物繊維+噛む行為で、インスリン分泌の準備ができ、血糖値が急激に上がるのを防ぐことができる
・食事の最初には野菜を、できれば30分かけて食べると良い(ベジファースト)
・たまには野菜ジュースに頼ってもOK、普段は野菜を噛んで食べることにこだわって
・麺類、丼は早食い&食べ過ぎになりやすいので、偏らないように注意
いかがでしたか。
子供の頃によく言われた「ゆっくりよく噛んで食べてね」という言葉。ずっと昔から親が子に言うセリフですが、喉を詰まらせる心配だけではない、化学的な理由がきちんとあったのです。
先人の知恵とは理にかなっていることが本当に多いですね。
カロリーや脂質を気にすることも、とっても大切。ですがそれと同じくらい、ゆっくりよく噛んで食べることも、とても大切。
同じものを食べても食べ方ひとつで体への影響が変わるなら、実践しない手はないですよね。
次の食事からすぐにできることですので、取り入れてみてください。
次の記事は、腸内細菌をテーマに書こうかと思案中です。
ぜひお楽しみにくださいね。